可愛い君と、新年を(頂き物絵SS)

標準

まるこさんにいただいたお年賀絵で年越しSS٩( ‘ω’ )و書かせていただきました!こんな素敵な2人のイチャ絵を見て、何も妄想しないわけがない…(*ノωノ) イヤン アナログ葉書でいただいて…これぁ一生の家宝です///

というわけで、勝手に作ったSSです。起承転結オチ全然ありません。2016年もよろしくお願いします☆


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『可愛い君と、新年を』

※時期/高2(背徳の堕天使 第一章あたりの二人)

 

クリスマスにライブをすると、結構な確率でその後体調を崩す今西光は、昨年の年越しは病院で過ごした。今年はなんとか自宅で過ごすことができただけ、良しとしよう。

そんな年の、ありふれた物語。

 

「よく考えたら、年越しを二人で過ごすのって初めてじゃない」

「……そうだっけ?」

 

十二月三十一日。大晦日。

 

昨日まで熱が下がらず寝込んでいたけれど、なんとか自力で回復した光は、リビングのソファで正月おせち料理のレシピ集を食い入るように見つめていた。風邪をぶり返さないようにと、勝行に肩からかけてもらったひざ掛けは、ライブの後にファンから頂いた差し入れだ。それはマシュマロタッチのふんわりした優しい肌触りで、どうやら光は大変気に入った様子。

ぬくぬくとした毛布の感触を無意識に撫でて楽しんでいる光を見ていると、勝行の頬も自然に綻ぶ。

クリスマスライブ時の差し入れは他にもあって、まだ開封すらしていないものが幾つもある。ライブハウスに来てくれたファンたちは、予告なしのゲリラライブであったにも関わらず、贈り物を抱えて待ち伏せしていたらしい。まだデビューして間もないし、売り出し途中であるにも関わらず、こうして追いかけてくれるファンは、上京後ずっとライブハウスでバイトしながら唄ってきたデビュー前のWINGSを知る人間が殆どだ。だから光があまり丈夫な身体ではなく、冬はよく体調を崩して休むことも知っている。

未開封のプレゼント袋をいくつか抱えて、勝行は光の足元にそれらを置いた。ふわふわとした手触りのものが入っていそうな、大物が二つほどある。

「これ、まだ開封してないみたいだし、今のうちに見てみたら」

「……ん?んー……」

プレゼントはあまり受け取らない主義の光だが、ライブハウスに預け置かれたものはほぼ無断で押し付けられるからどうしようもない。ドネーション制のチップ方式でライブ出演しているから、これはいわばWINGSのライブパフォーマンスに対する客からのおひねりだ。金銭以外は置いて帰るとオーナーが困るので、報酬として貰って帰るのだが、光宛ての名前が書いてあっても当の本人は興味も持たず、今まで開けようともしていなかった。声をかけてもこのような感じで、ちっとも乗り気ではない。

「そのひざ掛けみたいな、実用的なものが入っているかもしれないよ」

袋の上から中身の感触を確かめつつ、勝行がそう呟くと、光は初めて興味を示したかのようにそちらを眺めた。俺が開けてもいい?と勝行に訊かれて、思わずコクリと頷く。

濃いベージュの布地が顔を出すと、何やら厚手のスウェットのようなものが袋から出てきた。冬の暖かアイテムには違いないようだ。一体なんだろう、と光は興味津々な面持ちで取り出される中身を見つめる。

「なに、それ」

「……きぐるみかなぁ」

「?」

「ええっと……冬の寝巻みたいな。室内用のちょっと可愛いルームウェアだね」

光の身長からして、こんな可愛らしい動物耳のついたきぐるみウェアなど、サイズが合わなさそうだ。しかし、表から見える場所のタグにはメンズフリーとサイズ記載されていた。表地ジャージのような綿素材だが、内側はふわりと柔らかいボア裏起毛で、いかにも暖かそうだ。フードについた耳の形が想像よりも丸っこくて大きいし、熊か猿の着ぐるみかな、と勝行は思考を巡らせた。その中からメッセージカードらしきものもはらりと落ちたが、勝行はそれをちらりと一瞥して一瞬眉をひそめ、そっとカードをポケットにしまった。

「服なのか?それ」

「うん。暖かそうだし、着てみたら」

「パジャマじゃねえのそれ」

「じゃあ、お風呂上りにするとか」

「……ああ、まあ、いいけど。ぬくそうだし」

服だと分かった途端、デザインまでは見もしないで光は再びレシピ本に視線を戻した。日頃から私服に頓着のない光は、勝行に出されたものを何でも着る。元々所持している服も少ないし、WINGSの総プロデューサーでデザイナーでもある置鮎保が仕事で提供してくれたものを私服に貰うこともあるくらいだ。そういえば自分で服を買うところなんて、滅多に見ないなと勝行は思い返していた。

あえてこれ以上デザインを見せなくても着てくれるようだ。これは記念撮影が必要かもしれない、と含み笑いを浮かべた勝行は、袋から出した着ぐるみウェアを軽く畳んで、脱衣所の籠に入れておいた。

 

 

**

夕飯に蕎麦を啜って入浴も済ませた光が、脱衣所で袖を通した寝巻は、可愛らしくも暖かい、おさる柄のつなぎだった。上着に耳のついたフードと、垂れる尻尾がついている。

一瞬、……服だよな?と、光は首を傾げた。

「なあ勝行、なんだこれ、邪魔なんだけど」

その尻尾飾りをぶらぶらと弄びながら脱衣所を出た光を見て、勝行の冷静沈着な顔は一気に全面崩れそうになった。濡れた髪をフードで乾かそうという日頃の手抜き精神のおかげか、彼の頭上には可愛いおさる耳がついて、さながらガラの悪いボス猿のようだ。

「ひ、光……せっかくだから、写真撮って源次に送ろう?」

「は?なんで」

「多分ものすごく、和泉さんが喜びそうなファッションだから」

「リンが?これを?」

本当はファンの女の子たちがこの姿を見てみたくて贈ってくれたものだろうが、ファンのために写真を、といえば「嫌だ」と駄々をこねる光だ。ここは敢えて可愛い弟と幼馴染みをダシにつかって、勝行はこみあげてくる笑いを必死に堪えながら撮影を提案した。

本当にファッションに何の頓着もないのか、この恰好がものすごくシュールでかわいいということに気が付いていないのか。きっと鏡に映る自分の姿すら、見もしないのだろう。光は不思議そうに勝行の顔を覗き込みながら、まあ別にいいけど、と撮影許可を出した。

「どうだった、その服の着心地は」

気が変わる前にと、素早く携帯カメラのシャッターを何度も押下する勝行が、口元を緩ませながら光に着用後の感想を求めてみると、意外な答えが返ってきた。

「あったけぇな」

ふわふわとした肌触りの素材は、やはり光の好物だったようだ。フード裏に施されたもこもこのマイクロフリースを触りながら答えた光は、フードを頬に少し擦り付けた。

その仕草が堪らなく甘くて可愛らしい。長身で不良じみた目つきの悪い男子高校生の豹変ぶりに、勝行は思わず「お前、かわいいな」と声に出して小さく呟いてしまった。

「はあ?何か言ったか」

「何でもないよ」

慌てて誤魔化しながら、勝行は撮った写真をすぐさま保存して一旦携帯電話を閉じた。着ぐるみのおさると化した光は、不審なものでも見るような目をしながら、これ邪魔なんだけど、と再び尻尾をぶらぶらさせた。

「言う事聞かない光を取り抑えるのに最適な部位じゃない」

「てめえ……言ってくれるじゃねえか」

「ふふふ、ふっ、……あ、あはははっ」

もうこれ以上耐えられない、と言わんばかりに、携帯電話を投げ出した勝行は声を上げて笑い出した。あまりに珍しいその姿に、光は驚いてすぐには反応を返せない。勝行は笑いながら着ぐるみ姿で茫然と立ち尽くす光の尻尾をひっぱり、リビングのソファ上に放置されているドライヤーの傍まで連れて行く。

「ちょ、まてコラ、何笑ってんだテメエ!」

「ごめ、もう……ちょっと色々ツボにはまりすぎて……っ」

「だから何が!もしかしてヘンな服なのかコレ?なあ!」

過去に一度保に騙されて、犬耳と首輪を付けたわんこコスプレをやらされたことがある光は、はたと自分の恰好が動物コスプレなのではないかと気が付いたらしい。そんなの、着る前に気づけよな、と笑いながら、勝行は強引にソファの前に光を座らせ、フードを外して濡れたままの髪をぐしゃっと掻き回した。

「ふふふっ、来年の干支だから、猿の着ぐるみだなんて……縁起がいいから今日はお猿の光にご奉仕するよ」

「サルぅ?」

「どう見ても、そうだろ?」

馬鹿にしたような勝行の言動に反論しようと睨みつけた光の顔には、思いっきりドライヤーの温風を吹きつけられた。ウッと思わず目を瞑る光を見ながら、まだ尚も笑い続ける勝行が、濡れたその髪を撫でつけながら乾かし始める。強引なくせに優しいその手に髪を、頭皮をくすぐられて、光の顔は更に複雑怪奇な表情になっていく。

「べつにっ、乾かさなくてもいい!」

「何言ってるの、風邪ぶり返したら正月早々また病院行きだよ」

「うっ……なら、嗤うな!」

「もう笑ってないよ」

「うそつけ!」

ふて腐れ、もうコレ脱ぐ!とまで言い出した光をあやすように、ごめんごめんと謝りながら、キャラメル色の細い髪をゆっくり梳くっていく。温風でなびくその髪は、すぐに乾いてきて指通りのよいサラサラの質感が戻ってくるから、指に絡めてはほどけていく感触を何度も愉しむ。光がそれをされると、気持ちよくなってだんだん眠たくなってくることを見越した行為だ。

「……お前ムカツク……」

案の定、機嫌を損ねながらも欠伸を漏らした光の様子を覗き見て、勝行はまた、可愛いなと笑みを漏らした。

入浴前からソファの傍に放置したままだった料理レシピ集を片手で拾い上げて、光の手元にそっと置いた。ちらりと一瞥した光の視線の先にある写真は、正月の風物詩、おせち料理だ。

日中、一生懸命本を見ながら光が作ったいくつかのおせち料理は、御重箱がないので一品ずつタッパーに詰めてキッチンに置いてある。明日相羽本家へ挨拶に帰る際、本家専属のシェフに巧く出来たかどうか、味見してもらうと言っていた。甘辛い、煮炊き物の香りが漂うリビングの中、勝行は優しく甘ったるい声で耳元に語りかける。

「光の作った料理、明日まで食べられないなんて待ちきれないな」

「しるか……」

「明日実家に戻る前に、ちょっとだけ食べてもいい?」

「…………」

「向こうに行ったら、きっとお前にって、シェフのお手製ケーキが用意されているからさ……」

「…………」

「俺はケーキより、光の作ったおせちが食べたい」

「……そんないうほど、作ってねえし……材料あった分しか……」

「うん、それがいい」

「…………へんなやつ……」

素直に食べたいと言われて恥ずかしくなったのか、そっぽを向いた光は、ドライヤーの温風が止まった途端、ずるずると勝行の身体に上半身凭れかけ、だらりと寝転がった。

「どうせ酒のツマミに欲しいんだろうが」

「……よくわかったね」

「お前の行動、くらい、な……」

何かを言いかけたまま、言葉が消え入るように小さくなっていく。

ドライヤーを手元で片づけつつ、目の前の光を覗き込むと、あっという間に眠りこけてしまっていた。会話しながら寝るなんて、器用な奴だなと呆れながらも、そのあどけない寝顔はいつ見ても可愛い。着ぐるみ姿だからか、殊更に。

「なあ……お前がここで寝たら、俺動けないし、呑めないんだけど?」

ぶに、と頬をつねってみるも、もう反論は返ってこない。

おせちを肴に、お湯割りでも啜りながら、初めての二人だけでの年越しを楽しもうと思っていたのだが、光にはまだ夜更かしできるほどの体力は回復していなかったようだ。

手の届く範囲にあった光のひざ掛けを引っ張ってきて、そっと身体にかけながら、その柔らかい素材の手触りを撫でてみる。

柔らかいぬいぐるみのような、ふわふわの綿毛みたいな繊維に、身体が優しく包み込まれている感覚が好きなのか。くう、と気持ちよさそうに寝入る光を覗き見て、勝行は一人静かにほほ笑んだ。

 

どこからか、除夜の鐘の音が小さく聴こえてくる気がした。

東京の中心街でも聴こえるものなのか、と勝行は思わずその音に耳をそばだてる。

膝の上で眠る光の小さな寝息が、除夜の鐘に混じって聴こえてきた。

もうすぐ終わる怒涛の日々に別れを告げる音。そして間もなく新しい一年の幕が明ける。そんな瞬間に、気心の知れた家族と二人、肩寄せ合って過ごせるなんて今まで一度もなかった。……そう思うと、自分に無防備にも全身預けきったこのあどけない寝顔の着ぐるみ高校生が、なんとも愛おしくて仕方ない。小さい子どもかと言いたくなるほどほかほかと熱を帯びるその身体が、お湯割りの代わりに自分を芯から温めてくれる。

乾ききったキャラメル色の髪をもう一度撫でて自分の頬に抱き寄せながら、勝行は眠る彼の耳元にそっと囁いた。

 

「よいお年を……お休み、光」

明日、起きたら俺が一番に。

 

『明けましておめでとう』と、君に伝えるよ。

 それまでは、ずっと、ここに。

おわり***


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